「うちの子はことばが少ないから、コミュニケーションが取れない」。こうしたお悩みをお聞きすることがありますが、言語聴覚士(ST)の立場からお伝えしたいのは、コミュニケーションはことばだけではないということです。

この記事では、ことば以外のコミュニケーション手段も含めた「コミュニケーション力」全体について解説し、どのように育てていくかをお伝えします。

コミュニケーション=ことば、ではない

コミュニケーションとは「相手と意思や感情を伝え合うこと」です。そして、私たちが日常で行うコミュニケーションの多くは、実はことば以外の手段に支えられています。

  • 表情:笑顔、泣き顔、困った顔。お子さまは早い段階から表情を使って気持ちを表現しています。
  • ジェスチャー:手を振る、首を振る、指をさす。ことばが出る前から、身振りでコミュニケーションを取っています。
  • 視線:相手の目を見る、視線をそらす、物を見てから大人を見る。視線の使い方そのものがコミュニケーションです。
  • 身体の動き:近づく、手を引く、物を持ってくる。身体全体を使ったコミュニケーション手段です。
  • 声のトーン:ことばにならなくても、声の大きさやトーンで感情を伝えることができます。

言語聴覚士は、ことばだけでなく、これらの非言語的なコミュニケーション手段すべてに目を向けて評価と支援を行います。ことばがまだ出ていないお子さまでも、すでに豊かなコミュニケーション力を持っていることも多いのです。

やりとりの発達段階

コミュニケーション力は段階的に発達していきます。言語聴覚士としては、以下のような発達の道筋を意識しながら支援を行っています。

  • 要求の段階:「欲しい」「やりたい」という自分の欲求を相手に伝える段階です。泣く、手を伸ばす、指差すなどの方法で表現します。コミュニケーションの最も基本的な形です。
  • 共感の段階:「一緒に楽しい」「見て見て」という気持ちを共有する段階です。面白いものを見つけたときに大人を振り返る、笑顔を向けるなどの行動が見られます。
  • 報告の段階:「あったよ」「できたよ」と自分の体験を相手に伝える段階です。単に要求するのではなく、情報を共有する力が育っています。
  • 会話の段階:話題を共有し、交互にやりとりを続ける段階です。相手の話を聞いて応答し、自分からも話題を提供できるようになります。

お子さまがどの段階にいるかを正しく理解することで、適切な支援の方向性が見えてきます。

「伝わった!」体験の積み重ね

コミュニケーション力を育てる上で最も重要なのは、「伝わった」「わかってもらえた」という成功体験です。この体験が「もっと伝えたい」という意欲を育て、コミュニケーション力の発達を促進します。

逆に、「伝えたのにわかってもらえない」「何度言っても聞いてもらえない」という経験が続くと、お子さまは伝えること自体を諦めてしまうことがあります。そうなると、ことばの発達にも悪影響が及びます。

大人の役割は、お子さまの伝えようとするサイン(どんなに小さなものでも)に気づき、応答することです。「あ、あれが欲しいんだね」「楽しいね」と受け止めてもらう体験が、コミュニケーション力の土壌を肥やしていきます。

個別療育でのアプローチ — お子さまの興味からスタート

pocopocoの個別療育では、言語聴覚士が以下のようなアプローチでコミュニケーション力を育てています。

  • 興味をベースにした活動設計:お子さまの好きなもの、興味のあるものを活動に取り入れます。好きなことをしているときこそ、「伝えたい」気持ちが自然と湧いてきます。
  • OWL(Observe, Wait, Listen)の実践:お子さまを観察し(Observe)、反応を待ち(Wait)、発信に耳を傾ける(Listen)。STが主導するのではなく、お子さまの自発的なコミュニケーションを引き出す姿勢を大切にしています。
  • コミュニケーション手段の拡充:ことばだけにこだわらず、ジェスチャー、絵カード、写真カードなど、お子さまに合った手段でコミュニケーションの幅を広げていきます。
  • やりとりの構造化:「あなたの番→わたしの番」のような交互のやりとりを、遊びの中に自然に組み込みます。ボール転がし、積み木の交互積みなど、シンプルな活動が効果的です。

集団場面での実践 — 午後の小集団がコミュニケーションの練習場

個別療育で育てたコミュニケーション力は、実際の対人場面で使ってこそ定着します。pocopocoの午後の小集団プログラムは、まさにその実践の場です。

少人数のグループの中で、友達に「貸して」と伝える、順番を待つ、一緒に遊ぶことを提案するなど、実際のコミュニケーション場面を経験します。大人数の集団では圧倒されてしまうお子さまも、小集団であれば安心してチャレンジできます。

集団生活に向けたコミュニケーション力は、このような段階的な環境の中で着実に育っていきます。

保育士との連携 — STが育てた力を集団場面で活かす

pocopocoにおいて、保育士は単なる「お世話係」ではありません。STが個別療育で育てたコミュニケーション力を、集団場面で実際に使えるようにサポートする重要な専門職です。

STと保育士は日常的に情報共有を行い、以下のような連携を実施しています。

  • お子さまの現在のコミュニケーション段階の共有
  • 個別で使えるようになった表現方法を集団場面でも促す
  • 集団の中で見られた新しいコミュニケーション行動をSTにフィードバック
  • お子さまの興味や得意を活かした集団活動の企画

個別療育は手段であり、目標は集団の中で自分らしくコミュニケーションが取れるようになること。この理念のもと、ST、保育士、そしてPTが一体となってお子さまの成長を支えています。

お子さまのコミュニケーションが気になる方は、見学・相談からお問い合わせください。スタッフ紹介のページで、pocopocoの専門職チームの体制もご確認いただけます。