「1歳半を過ぎたのにまだ言葉が出ない」「2歳になっても単語が数個だけ」——ことばの発達に関する心配は、保護者さまにとって大きな不安のひとつです。

この記事では、言語聴覚士(ST)の視点から、ことばが出るまでに必要な「土台」の力について丁寧に解説します。ことばの発達を促すために、何を大切にすればよいのかが見えてくるはずです。

ことばが出る前に必要な「土台」

多くの保護者さまは「ことばが出ること」に注目されますが、言語聴覚士として強調したいのは、ことばが出る前には豊かな「土台」が必要だということです。ことばは、いくつもの力が積み重なった結果として現れるものです。

  • 視線の共有:同じものを一緒に見る力。「あっ、わんわんだよ」と大人が指差したものに目を向けられることが、ことばの理解の出発点です。
  • 指差し:自分の興味を相手に伝える手段です。「あれが欲しい」(要求の指差し)だけでなく、「あれ見て」(叙述の指差し)ができるようになることが、ことばの発達と深く結びついています。
  • 共同注意:「子ども—大人—対象物」の三項関係が成立すること。お子さまが何かに興味を持ち、大人の顔を見て確認し、また対象に戻る。この三角形のやりとりが、コミュニケーションの基盤です。
  • 模倣:大人の動きや音を真似する力。手遊びを一緒にやる、大人の口の動きを真似るなど、模倣の力がことばの音を覚えることにつながります。

これらの土台が十分に育っていれば、ことばは自然と芽を出してきます。逆に、これらの土台が十分でない段階で単語を教え込もうとしても、効果は限られてしまいます。

発語の発達段階

ことばの発達には、おおまかな道筋があります。個人差は大きいですが、以下の流れを知っておくことで、お子さまが今どの段階にいるのかを理解する手がかりになります。

  • クーイング・喃語(0〜8ヶ月頃):「あー」「うー」といった母音の発声から始まり、「ばばば」「まままま」のような反復喃語へと進みます。この時期は、声を出すこと自体を楽しんでいる段階です。
  • ジャルゴン(9〜12ヶ月頃):抑揚のある「おしゃべり風」の発声が出てきます。まだ意味のある言葉ではありませんが、コミュニケーションの意図を持って声を出し始めている重要な段階です。
  • 初語(12〜18ヶ月頃):「まんま」「ブーブー」「わんわん」など、意味のある最初のことばが出てきます。10語程度に到達するまで時間がかかることもあります。
  • 語彙爆発・二語文(18ヶ月〜2歳半頃):語彙が50語を超えたあたりから、急速にことばが増える「語彙爆発」が起こることがあります。「まんま ちょうだい」「パパ きた」のような二語文も出始めます。
  • 多語文(2歳半〜):三語文以上の文を組み立てられるようになり、会話らしいやりとりが増えていきます。

発達の目安について、より詳しくはことばの遅れチェックリスト【年齢別】をご参照ください。

「伝えたい」気持ちが最も大事

言語聴覚士として、最も大切にしているのは、お子さまの「伝えたい」という気持ちです。ことばの発達支援は「言語訓練」ではありません。音声を正しく発する訓練を行うのではなく、お子さまが「誰かに何かを伝えたい」と思える環境を整え、その気持ちを育てることがSTの仕事です。

「伝えたい」気持ちがあるからこそ、お子さまは声を出し、身振りを使い、やがてことばを獲得していきます。この気持ちは、安心できる人間関係の中で、「伝わった」「わかってもらえた」という体験を積み重ねることで育っていきます。

STの個別療育でやること

pocopocoの言語聴覚士は、個別療育の中で以下のようなアプローチを行っています。

  • 興味の観察:お子さまが何に興味を持っているかを丁寧に観察します。興味のあるものを通じてコミュニケーションが生まれやすいため、お子さまの「好き」を出発点にします。
  • 環境調整:刺激を適切に調整し、お子さまが集中してやりとりできる環境を作ります。物の配置、選択肢の提示の仕方なども工夫します。
  • モデリング:お子さまが表現したいと思っている内容を、STが言語モデルとして示します。「あ、りんご欲しいんだね。りんご」というように、自然な文脈の中でことばの手本を見せます。
  • 拡充模倣:お子さまが「ブーブー」と言ったら、「ブーブー 走ってるね」と少し広げて返す方法です。お子さまのことばを否定せず、自然に語彙や文法を広げていきます。

詳しくはプログラム紹介をご覧ください。

ことばは「集団の中で育つ」側面もある

個別療育でことばの土台を育てることは非常に重要ですが、言語聴覚士として忘れてはならないのは、ことばは本来「人との関わりの中で育つもの」であるという点です。

友達が「かして」と言っているのを聞いて、自分も言ってみる。みんなで歌を歌う中で、新しい言葉を覚える。先生の読み聞かせを聞いて、知らなかった言葉に出会う。こうした集団の中での言語体験は、個別療育では得られない豊かさがあります。

pocopocoでは、STが個別で育てたことばの土台を、保育士が運営する午後の小集団プログラムの中で活かしていきます。保育士は、お子さまの言語レベルに合わせた声かけや活動の工夫を行い、集団の中でことばを使う機会を自然に作ります。STと保育士の連携が、お子さまのことばの発達を多方面から支えています。

家庭でできること

ご家庭でも取り組んでいただけるポイントをお伝えします。

  • 先回りしない:お子さまが何かを欲しそうにしているとき、すぐに渡してしまうと「伝える」機会が減ってしまいます。少し待って、お子さまが声や身振りで表現するのを待ちましょう。
  • 実況中継:お子さまがしていることを「ことば」にして聞かせてあげましょう。「積み木を重ねてるね」「赤い車を走らせてるね」というように、お子さまの行動を言語化します。
  • 選択肢を示す:「何が飲みたい?」と自由回答にするよりも、「お茶とジュース、どっち?」と選択肢を見せて選ばせる方が、ことばを引き出しやすくなります。

ことばの発達に関して詳しい情報はことばの遅れについてのページでもまとめています。お子さまのことばが気になる方は、見学・相談でお気軽にご相談ください。言語聴覚士が丁寧にお子さまの状態を評価いたします。