「呼んでも振り向かない」ことへの不安
お子さまの名前を呼んでも反応がない、何度呼んでもこちらを見ない。そんな場面が続くと、「聞こえていないのかな」「何か発達に問題があるのかな」と不安になるのは自然なことです。
呼びかけに反応しない原因はひとつではありません。聞こえの問題、注意の発達、感覚の処理の仕方など、さまざまな可能性が考えられます。大切なのは、原因を決めつけず、丁寧に見ていくことです。
まず確認したい「聞こえ」の問題
呼びかけに反応しないとき、最初に確認したいのは聴覚の問題です。軽度の難聴や、中耳炎による一時的な聞こえの低下は、見逃されやすいことがあります。
- 滲出性中耳炎:痛みがないため気づきにくく、聞こえが悪くなっていることがあります。風邪の後に起こりやすいです
- 軽度難聴:静かな場所では聞こえるけれど、騒がしい環境では聞き取りにくいという場合があります
- 片耳の聞こえの問題:片耳だけ聞こえにくい場合、呼びかけの方向によって反応が変わることがあります
まずは耳鼻科を受診し、聴力検査を受けることをおすすめします。乳幼児でも受けられる検査がありますので、かかりつけの小児科に相談してみてください。聞こえに問題がないことが確認できれば、次のステップとして発達面を考えていくことができます。
聞こえているけど反応しない理由
聴力に問題がないのに呼びかけに反応しない場合、いくつかの発達的な背景が考えられます。
注意の向け方の発達
子どもの注意(集中)の力は、年齢とともに発達していきます。幼い子どもは、ひとつのことに夢中になると他のことに注意を向けるのが難しくなります。これは「過集中(ハイパーフォーカス)」とも呼ばれ、遊びに没頭しているときに名前を呼んでも気づかないのは、この注意の特性が関係していることがあります。
通常、3〜4歳頃になると、遊んでいても大人の呼びかけに一旦注意を切り替えられるようになってきます。しかし、注意の切り替えが苦手なお子さまは、この力の発達にもう少し時間がかかる場合があります。
感覚処理の特性
私たちの脳は、日常的にたくさんの感覚情報(音、光、触覚など)を処理しています。この処理の仕方に特性があるお子さまは、周囲の音を「うまくフィルタリングできない」ことがあります。
- 聴覚の過敏さ:すべての音が同じように聞こえてしまい、名前の呼びかけを周囲の音から区別するのが難しい
- 聴覚の鈍感さ:音への反応が薄く、大きな声で呼んでも気づきにくい
- 視覚優位:音声よりも目で見る情報に注意が向きやすく、声だけの呼びかけに反応しにくい
ことばの理解の発達
自分の名前が「自分を指す呼びかけ」であると理解するには、ことばの発達が関わっています。ことばの発達がゆっくりなお子さまは、名前の理解にも時間がかかることがあります。また、名前を呼ばれたときに「振り向く」「返事をする」というやりとりの仕方自体を、まだ学んでいない場合もあります。
年齢ごとの反応の目安
名前への反応の発達には個人差がありますが、おおまかな目安をお伝えします。
- 6〜9か月頃:名前を呼ぶと声のする方を見る、振り向くようになる
- 1歳頃:名前を呼ぶと振り向き、呼んだ人の方に近づいてくる
- 1歳半〜2歳頃:少し離れた場所からでも名前に反応し、返事のような声を出す
- 3歳以降:遊びに集中していても、名前を呼ばれると一旦注意を向けられる
1歳半を過ぎても名前に反応しない場合や、以前は反応していたのに反応しなくなった場合は、早めに専門家に相談することをおすすめします。
ご家庭でできる関わり方の工夫
呼びかけへの反応を育てるために、日常生活の中でできる工夫があります。
- 近くで呼ぶ:離れた場所から呼ぶのではなく、お子さまの近くに行き、目の高さを合わせて呼びかけましょう
- 視覚的な手がかりを加える:名前を呼びながら肩に軽く触れる、手を振るなど、声以外の情報を加えると気づきやすくなります
- 反応できたら褒める:振り向けたとき、目が合ったときに「見てくれたね、ありがとう」と笑顔で伝えることで、呼びかけに応えることの心地よさを感じてもらえます
- 静かな環境をつくる:テレビや音楽を消した状態で呼びかけると、お子さまが声に気づきやすくなります
何度も大きな声で呼んだり、叱ったりすると、呼びかけ自体がお子さまにとって嫌な体験になってしまいます。穏やかに、工夫しながら関わることが大切です。
専門家に相談するタイミング
以下のような様子が見られる場合は、早めに専門機関に相談することをおすすめします。
- 1歳半を過ぎても名前に反応しない
- 名前だけでなく、大きな音にも反応が薄い
- 以前は振り向いていたのに、反応しなくなった
- 名前への反応に加えて、ことばの遅れや目が合いにくさも気になる
- 保育園・幼稚園でも同様の指摘を受けている
相談先としては、かかりつけの小児科、地域の発達支援センター、耳鼻科などがあります。「まだ様子を見ましょう」と言われることもありますが、心配が続く場合は別の機関にも相談してみてください。
言語聴覚士(ST)の視点からの支援
児童発達支援では、言語聴覚士(ST)がお子さまの「聞く力」「注意を向ける力」「ことばの理解」を総合的に評価し、支援を行います。
- 聞く力の評価:聴力検査だけではわからない「ことばとして聞き取る力」を確認します
- 注意力の支援:音に注意を向ける練習や、呼びかけに応える練習を遊びの中で行います
- コミュニケーションの土台づくり:名前を呼ばれて振り向く、視線を合わせるといった、やりとりの基本を育てます
pocopocoでは、STをはじめとする専門スタッフがお子さま一人ひとりの特性を見極め、「呼びかけに気づける」「やりとりを楽しめる」ための支援を行っています。お子さまの反応が気になる方は、お気軽にご相談ください。