「ことばの発達に良い絵本はありますか?」。保護者さまからよくいただくご質問のひとつです。絵本は、お子さまのことばの発達を豊かに育むツールとして、言語聴覚士(ST)の立場からも強くおすすめしたいものです。
この記事では、発達段階別に、STの視点で選んだおすすめの絵本10冊をご紹介します。それぞれの絵本がなぜことばの発達に良いのかも解説していますので、絵本選びの参考にしてください。
絵本はなぜことばの発達にいいのか
絵本の読み聞かせがことばの発達に良いとされる理由は、いくつかあります。
- 繰り返しの構造:多くの幼児向け絵本は、同じフレーズや展開が繰り返されます。この繰り返しが、ことばの記憶と予測を助けます。「次はこう言うんだよね」と先読みできる体験は、ことばの理解力を高めます。
- 視覚と聴覚の同時入力:絵を見ながらことばを聞くことで、「もの」と「名前」が結びつきやすくなります。これは語彙の獲得に直結します。
- 共同注意の場:親子で同じ絵本を見ることは、自然と共同注意の練習になります。「これなに?」「あ、ねこだね」というやりとりが、コミュニケーションの力を育てます。
- 感情体験の共有:物語を通じて嬉しい、悲しい、びっくりした、などの感情を親子で共有する体験が、ことばで気持ちを表現する力の土台になります。
0〜1歳向けのおすすめ絵本(3冊)
この時期は「ことばの音」に親しむことが大切です。意味がわからなくても、リズミカルな音を聞くこと自体が言語発達の基礎になります。
- 「じゃあじゃあびりびり」(まついのりこ):「じゃあじゃあ」「びりびり」「ぶーぶー」など、オノマトペ(擬音語・擬態語)がたくさん出てきます。オノマトペは、最初のことばとして出やすい表現のひとつです。音のリズムが楽しく、赤ちゃんが声を出すきっかけになります。
- 「いないいないばあ」(松谷みよ子):「いないいない……ばあ!」の繰り返し構造は、「次に何が起こるか」を予測する力を育てます。予測する力は、ことばの文法理解の土台にもなります。また、ページをめくる動作が親子のやりとりのリズムを作ります。
- 「もこもこもこ」(谷川俊太郎):不思議な絵と抽象的なオノマトペの組み合わせが特徴です。「もこ」「にょき」「ぱちん」といった音は、お子さまの発声を誘いやすいです。抑揚をつけて読むことで、ことばのメロディ(プロソディ)への感受性を高めます。
1〜2歳向けのおすすめ絵本(3冊)
語彙が増え始めるこの時期には、繰り返しの中でことばを覚えやすい絵本や、日常生活と結びつく絵本が効果的です。
- 「だるまさんが」(かがくいひろし):「だ・る・ま・さ・ん・が……どてっ」のリズムが、子どもたちを魅了します。体の動きと連動させて読むことで、ことばと動作が結びつき、全身を使ったコミュニケーションの楽しさを体験できます。シリーズ全3冊、どれもおすすめです。
- 「きんぎょがにげた」(五味太郎):「きんぎょが にげた」「どこに にげた」の問いかけ構造が秀逸です。お子さまが指差しで「ここ!」と答える場面が自然に生まれ、指差しとことばを引き出す絵本として定番中の定番です。Amazonでもお求めいただけます。
- 「おつきさまこんばんは」(林明子):「おつきさま こんばんは」という呼びかけの表現が、挨拶のことばを覚えるきっかけになります。表情の変化が豊かに描かれていて、気持ちを読み取る力(感情理解)の発達も促します。
3〜5歳向けのおすすめ絵本(4冊)
ストーリーの理解が進むこの時期には、物語の展開を楽しめる絵本や、やりとりが広がる絵本がおすすめです。
- 「はらぺこあおむし」(エリック・カール):曜日、食べ物、数など、さまざまな語彙が自然に学べる一冊です。「月曜日、りんごをひとつ食べました」の繰り返し構造が、文の構造(語順)の理解を助けます。穴あきの仕掛けも、指先の探索意欲を刺激します。
- 「ぐりとぐら」(中川李枝子):ストーリーを追いながら、「次はどうなるかな?」と考える力を育てます。カステラを作る場面では、「混ぜて」「焼いて」など、手順を説明することばに触れられます。語彙の幅が広がる一冊です。
- 「おおきなかぶ」(A・トルストイ):「うんとこしょ、どっこいしょ」の掛け声を一緒に言う楽しさがあります。登場人物が次々と増えていく展開は、協力の概念を伝えるとともに、お子さまが声を合わせる体験を生みます。集団での読み聞かせにも最適です。
- 「100かいだてのいえ」(いわいとしお):各フロアに住む生き物たちの生活が細かく描かれ、「これ何してるの?」「何がある?」と会話が自然に広がります。数の概念に触れられるほか、説明する力(ナラティブ)を育てるのにも適しています。
絵本の読み聞かせのコツ(STの視点)
絵本を読む際に、言語聴覚士として意識していただきたいポイントをお伝えします。
- お子さまのペースに合わせる:文字通りに読み進めなくても構いません。お子さまが絵をじっと見ていたら、そのページにとどまって一緒に見る。興味がなさそうなら飛ばしても大丈夫です。お子さまの注意の向きに合わせることが大切です。
- 問いかけを入れる:「これなに?」「次どうなると思う?」「どの色が好き?」と問いかけることで、双方向のやりとりが生まれます。ただし、質問攻めにならないように注意しましょう。
- 繰り返しを大切にする:同じ絵本を何度も読みたがるのは、とても良いサインです。繰り返し聞くことで語彙が定着し、やがて自分で言えるようになっていきます。「また同じ本?」と思っても、お子さまの「もう一回」に付き合ってあげてください。
- 声に抑揚をつける:大きい声、小さい声、速い声、ゆっくりの声。声の変化はお子さまの注意を引きつけ、ことばのメロディ(プロソディ)への感受性を育てます。
集団での絵本の時間 — 保育士が行う読み聞かせの効果
ご家庭での読み聞かせに加え、集団での絵本の時間にも大きな意味があります。pocopocoの午後の小集団プログラムでは、保育士が読み聞かせの時間を設けています。
集団での読み聞かせには、一対一の読み聞かせとは異なる効果があります。友達と一緒に「うんとこしょ、どっこいしょ」と声を合わせる体験。友達が「あ、きんぎょ!」と見つけたのを聞いて「ほんとだ」と共感する体験。こうした経験は、コミュニケーション力を集団の中で発揮する練習になります。
STが個別で育てた「ことばの土台」を、保育士が集団の中で自然に引き出す。絵本の読み聞かせは、その連携の象徴的な場面のひとつです。
ことばの発達に関して詳しい情報はことばの遅れについてのページでもまとめています。お子さまのことばやコミュニケーションが気になる方は、見学・相談からお気軽にお問い合わせください。